抄録
女性ホルモンのプロゲステロン (P) には中枢性の呼吸刺激効果があることは認められているが, 末梢の頸動脈体に作用するかどうかは明らかでない. 本研究では, 女性ホルモンが末梢に作用するのかどうかを, 雄 Wistar ラットを用い, 低酸素換気応答 (HVR) の点から検討した. ラットにおいてはエストロゲン (E) がP受容体を増加させることが知られているので, Control 群, P単独投与群, E単独投与群, P+E同時投与群の各々において, 投与前後で, 覚醒状態での安静時換気および動脈血液ガス, HVRを測定した. その結果, P+E群においてのみ安静時一回換気量の増大による分時換気量の増加, PaCO2の低下およびHVRの亢進が認められた. HVRの亢進は呼気時間の短縮による呼吸数の増加によるものであった. これらのことより, 女性ホルモンは中枢神経系および末梢の化学受容体の双方に働く可能性が示唆された.