日本胸部疾患学会雑誌
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抗ミエロペルオキシダーゼ抗体陽性であった半月体形成性腎炎に伴う肺胞出血の1例
海野 剛大玉 信一澤田 めぐみ高野 省吾三宅 修司橘 俊一吉澤 靖之青木 延雄松原 修田中 健彦
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1994 年 32 巻 3 号 p. 277-282

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抄録
77歳の男性が血痰を主訴に受診. 肺胞出血と診断され安静のみで軽快したが, 9ヵ月後に腎不全を伴って再び増悪した. 肺と腎以外に病変はなく, 腎生検で半月体形成性腎炎の所見をみとめた. 抗基底膜抗体は陰性. 抗好中球細胞質抗体 (ANCA) は, perinuclear pattern の陽性像 (P-ANCA) を示した. さらに, 抗ミエロペルオキシダーゼ抗体 (抗MPO抗体) をELISA法により測定し, 陽性の結果を得た. P-ANCAは, 肺胞出血や各種血管炎, 腎炎で陽性となる事が知られていたが, 従来の間接蛍光抗体法では偽陽性が多かった. 最近, その実体である抗MPO抗体を直接検出できるようになり, 半月体形成性腎炎およびこれと関連した肺胞出血, microscopic polyarteritis に特異的であることが示され. 抗MPO抗体をマーカーとすることで, これまで肺-腎症候群または特発性肺血鉄症などと診断されていた症例が抗MPO抗体関連疾患と判断される可能性や, 生検を待たずに治療方針を決定できる可能性が示唆された.
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