1996 年 34 巻 10 号 p. 1121-1124
22歳, 女性. 発熱, 食欲低下, 咳嗽, 喀痰, 右胸痛を主訴として来院. 胸部X線写真上, 両肺野に浸潤影を認め, 喀痰よりNeisseria meningitidis が検出されたため, 本菌による両側性肺炎と診断した. N. meningitidis は本邦には常在せず, その感染症は輸入感染症とする考えもあるが, 本例は海外渡航歴がなく感染経路を特定できなかった. 本菌による呼吸器感染は稀であり, その場合でも多くは気管支炎に止まり, 肺炎にまで至る症例は極めて少ない. 本菌の易感染性要因である後期補体成分欠損は認められず, 免疫能にも異常はなかった. しかし, 本例は著明なるいそうがみられる上, 検査上も低栄養状態にあったことが分かっており, それが発症要因の一つになったと推測された. 治療にはニューキノロン系抗菌薬である DU6859a を経口投与し著効を示した.