1996 年 34 巻 10 号 p. 1125-1129
症例は33歳男性. 1988年5月集検で胸部X線上右上肺野に異常陰影を指摘されたため, 他院を受診するも無症状であったため良性腫瘍として経過観察されていた. 1992年12月頃から異常陰影の増大を認めたため1993年5月当院に入院した. 咳嗽, 喀痰などの呼吸器症状はなかったが胸部X線および high-resolution CT (HRCT) で右S2bに辺縁は明瞭で, 血管の集束と胸膜の巻き込みがみられず, 軟部組織より低濃度を示す結節状陰影を認めた. 1993年右S2区域切除術を施行し, 組織学的, 免疫組織化学的, および電顕所見より血管外皮細胞腫と診断した. 胸腔外の諸臓器の検索を施行したが, 他臓器に腫瘍や転移巣は認めず, 肺原発の血管外皮細胞腫と診断した.