1996 年 34 巻 10 号 p. 1140-1144
51歳女性. 1993年4月から発熱が出現, 左上葉に浸潤影を認め, 検痰にて M. avium complex が検出され, RFP, EB, INHを投与したが無効で, PZA, OFLX, SMに変更後解熱, 陰影も改善し退院. 1994年に入り血痰が出現. 左上葉の陰影増悪し再入院となった. 左上葉は無気肺となり, 気管支鏡では左上幹に表面平滑, 光沢のあるポリープ状の腫瘤が複数存在した. 同部の生検にてリンパ球, 形質細胞の浸潤を認め, 抗酸菌染色陽性であった. EVM, SPFX, CAMの追加により, 血痰は消失, 胸部写真上陰影も徐々に改善し, 左上葉支のポリープ状腫瘤もほぼ消失した. 菌はDNAプローブ法により M. avium と確定した. 気管支内腔にポリープ状の腫瘤を形成する非結核性抗酸菌症は稀である. 気管支鏡所見は肺癌との鑑別を要する. 欧米ではAIDS患者に同様の報告があるが, 本症例はHIV抗体陰性であった.