日本胸部疾患学会雑誌
Online ISSN : 1883-471X
Print ISSN : 0301-1542
ISSN-L : 0301-1542
ステンレス防錆剤塗布作業により発症した急性NO2ガス中毒の4例
嶋津 芳典小幡 八郎
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 34 巻 10 号 p. 1145-1149

詳細
抄録

鉄工所勤務の男性4名が, ステンレス製の酒造用タンク内で防錆剤の塗布作業中に, NO2ガスとフッ化水素ガスを吸入し, 2名が呼吸不全を発症し, 胸部X線で広汎な浸潤影を呈した. 呼吸不全は数日のうちに改善したが, 曝露後12ヵ月の呼吸機能検査による観察から, 末梢気道障害の遷延が疑われた. 本邦においてステンレス防錆作業による急性NO2ガス中毒の大半は, 半密閉空間での作業中に発症しており, 事故防止のためには, 防錆作業者への有毒ガス中毒にたいする知識の普及と密閉空間における送風マスク着用の徹底が必要と考えられた. 同一の条件で作業をしていた4名のうち, 非喫煙者の2名で, 症状が重症化したことから, NO2ガス中毒においては, 非喫煙者と喫煙者では感受性に差がある可能性が示唆された.

著者関連情報
© 日本呼吸器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top