1996 年 34 巻 9 号 p. 1030-1034
症例は59歳, 女性. 平成7年4月より左胸痛出現し, 近医にて胸部X線写真上縦隔陰影の拡大を指摘された. 当院外科へ紹介され, 経皮的針生検にて胸腺癌 (扁平上皮癌) と診断された. 胸部CT上腫瘍は心嚢液・胸水に加え, 肺転移も認められたため (正岡分類IVb) 現時点での手術適応なしとの診断にて当科紹介された. 平成7年6月より cisplatin (CDDP, 10mg/body/day, day 1-8)+vindesine (VDS, 3mg/body, day 1, 8) 1コースと同時に放射線照射 (24Gy) を施行した. その後さらにCDDP (30mg/body, day 1-3)+VDS (同上) 1コースを追加し, 腫瘍はCT上約75%縮小を認め, partial response (PR) が得られた. 腫瘍マーカーも治療後正常値まで低下を認めた. 平成7年8月外科的切除可能と判断し, 胸腺の腫瘍は両側の肺転移巣も含めて切除した. 切除標本では組織学的に腫瘍内に広範な壊死が認められ, 術前治療の効果が確認された.