日本胸部疾患学会雑誌
Online ISSN : 1883-471X
Print ISSN : 0301-1542
ISSN-L : 0301-1542
肺癌における消化管転移の検討
梁 英富酒井 洋池田 徹日比野 俊後藤 功米田 修一野口 行雄
著者情報
キーワード: 肺癌, 腫瘍転移, 消化管腫瘍
ジャーナル フリー

1996 年 34 巻 9 号 p. 968-972

詳細
抄録

1977年以降の17年間に当センターに入院した肺癌1,636例のうち, 手術または剖検によって食道を除く消化管に転移が確認されたのは30例であった. このうち生前に診断し得たのは7例, 剖検診断症例は23例であった. 組織型別の転移率は大細胞癌 (3.7%) が高く, 次いで腺癌 (2.4%), 小細胞癌 (1.7%), 扁平上皮癌 (0.7%) の順であった. 臓器別転移率は, 胃0.4%, 小腸1.1%, 結腸0.5%, 全体で1.8%で, 剖検298例では胃2.6%, 小腸5.7%, 結腸3.0%, 計9.7%であった. 剖検診断例のうち11例に, 生前何らかの腹部症状が認められていた. 便潜血反応は検査された11例中9例に陽性で, うち6例は無症状であり, 肺癌消化管転移の補助診断として便潜血反応が有用であると考えられた. また, 生前に診断し得た症例は小腸転移6例, 結腸転移1例, 主な症状は下血, 腸閉塞, 腸重積, 穿孔で4例に緊急手術が施行された. 症状発現からの平均生存期間は49日と予後不良で, 5例においては消化管転移が直接の死因であった. 進行する腹部症状が認められ便潜血反応が持続陽性の場合には, 消化管転移を念頭におく必要があると考えられた.

著者関連情報
© 日本呼吸器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top