1996 年 34 巻 9 号 p. 973-977
高張食塩水 (HTS) 吸入により惹起されたラット気管の血管透過性亢進に対する抗喘息薬である Sodium cromoglycate (SCG) の効果を in vivo で検討した. 血管透過性は血管外に漏出した Evans blue の吸光度を測定することにより評価した. 5~15%HTS吸入は血管透過性を濃度依存性に増加させた. SCG (10mg/ml) の前吸入は10%HTS吸入による血管透過性を抑制した. また, SCGはサブスタンスP吸入による血管透過性も抑制したが, PAF吸入による血管透過性には影響を与えなかった. さらに, SCGは5%HTS吸入による血管透過性亢進には無効であったが, ニュートラルエンドペプチダーゼ (NEP) 阻害薬であるフォスフォラミドンの存在下では, その効果を抑制した. よって, SCGはタキキニン拮抗様作用によりHTS誘発血漿漏出を抑制し, その効果は気道のNEP活性低下状態でより顕著となるものと考えられた.