1996 年 34 巻 9 号 p. 993-996
受傷側の対側にのみ所見を認めた肺挫傷の症例を経験したので報告する. 症例は47歳男性. 主訴は左胸痛. 伐採作業中に約2mの高さから転落し, 左胸部を打撲. 翌朝より左側胸部痛が出現し, 増強したため当科に入院となった. 入院時, 低酸素血症と炎症所見, 胸部レントゲンで右中肺野から下肺野にかけて斑状影, 左第7肋骨に骨折線を認めた. 右B3bからの気管支肺胞洗浄液は血性で, 右肺の経気管支肺生検では, フィブリンの析出と, ヘモジデリンの沈着を認め, 受傷部位と反対側に発生した肺挫傷と診断した. 症状と異常陰影は経過観察で改善した. 文献的にも打撲部位の反対側のみに肺挫傷を認めることは稀であり, その機序は, 反対側では縦隔の急速な振動により, 肺の圧縮と過伸展が起こり, 細血管の損傷を来すものと考えられた.