1997 年 35 巻 8 号 p. 900-904
甲状腺機能亢進症にともなう胸腺肥大の3例を経験した. 症例1は, 健診にて胸水を指摘され胸腺腫の合併が疑われた. 症例2は, 眼瞼下垂をきたし重症筋無力症 (Osserman I型) を併発した. 症例3は, 画像上胸腺肥大と縦隔リンパ節腫大を認めた. いずれも甲状腺機能亢進症をともない, まず抗甲状腺剤による機能正常化を計り, 症例1・2は, 拡大胸腺摘出術を施行した. 双方とも腫瘍性病変は見いだされず胸腺肥大であった. さらに甲状腺機能亢進症に対しては, 胸腺摘出術の効果は認めなかった. また症例2・3は, 抗甲状腺剤の投与による甲状腺機能の正常化にともない, 画像上胸腺肥大も改善された. 特に症例3は, 気管前リンパ節腫大を含め著明な改善がみられた. 甲状腺機能亢進症にともなう胸腺肥大は, 甲状腺機能亢進症の結果であって原因ではないと考えられた. それ故に外科療法を施行する前に甲状腺機能の正常化をはかり, しばらくの間, 腫瘤影の変化を観察してもよいと考えられた.