抄録
今回, 検討した脳血流SPECT画像はファンビームコリメータを使用したため疑似的に吸収補正したようになっている.従って, 散乱及び吸収補正をした画像とほぼ等価になり値も期待値に近いものになった.TEW法のSPECT像はコントラストを上昇させた.更にフィルム表示もlower level cutoffは必要ないと思われた.定量性を考えると付加価値をつけるため吸収補正も検討すべきである思われファンビームコリメータの感度補正後吸収補正を検討した.X線CT画像を利用して吸収補正した臨床画像で視床部が周辺部より高いカウントを示した理由は部分容積効果によるものであるとの考えを脳血流ファントムでは臨床画像の傾向は観察されないため否定された.むしろX線CT画像フィルムをスキャナーから読み込んだとき, 脳実質を観察するために骨部分が厚く表現されていた.さらに写真からは頭蓋骨の外側の頭皮輪郭は検出できなかった.以上のことから吸収補正が的確に行われなかったためと思われた.散乱線補正後, 吸収補正をするとき円筒プールファントムの検討により線吸収係数は0.15/cmをもちいるとよかった.しかし吸収補正範囲を吟味しないと良好な結果を得ることはできない.つまりhotな部分ばかりに気をとられないで背景にある構造物を意識しなければならない.臨床画像においてはFig.4に示すように頭皮輪郭周囲に吸収補正範囲を設定しても良好な結果が得られた.より正確に補正をするには頭皮血流範囲に骨の吸収を含めて吸収補正しなければならない.骨の吸収係数は年令および男女でかなり変動があるので定量性を強調するときは問題となるだろう.一応平均的に0.30/cmを用いると水に換算すると2倍の厚さとなるのでSPECT像のみで骨を考慮して吸収補正するときは頭皮血流範囲の外側に骨の厚さ分拡大して範囲設定すればよい.しかしその範囲で補正を行うと頭皮血流部分については過補正になるが臨床的には脳血流部分を対象としているので問題となることはないだろう.大脳基底核部の像で吸収補正範囲を決定しても頭頂部において脳血流値はあまり過補正になっていない.これはX線CT画像を観察すると頭頂に行くに従って結果的に骨の厚さが厚くなっているので補正範囲はあまり小さくなくてもよいと思われた.厳密に言えば頭頂付近の骨のCT値はやや低くなる.しかしSPECT像において吸収補正するときはあまり大きな問題とはならない.吸収補正はすべての施設で正確に行うことは不可能である.従って簡便に散乱線補正後のイメージに吸収補正をすることができれば頭部に関しては吸収補正が必須になると思われる.骨の吸収係数は個人差が大きいので簡便に調べることが可能になるならさらに精度の高いものとなるであろう.