日本放射線技術学会雑誌
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放射線業務における医療事故防止に関する学術調査 : 第二報 一般撮影,ポータブル撮影,透視造影検査,血管造影検査のリスク事例
熊谷 孝三天内 廣太田原 美郎西村 健司森田 立美
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2004 年 60 巻 6 号 p. 787-795

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抄録

近年の医療技術の高度化および専門化は,全く新しい医療サービスの提供を可能にする一方,新たなリスクを伴い,医療事故発生の要因ともなっている.日本の医療をとりまく環境が大きく変わりつつあるなか,医療に向けられる社会の評価はかつてなく厳しいものになっており,そうした事故がこれまでになく紛争,訴訟につながっていくという事実も認識しておく必要がある.事故を防止するためには,リスク感覚を持つことが重要だといわれている.リスク感覚とは,リスクにさらされているという意識のことで,ある行為をしようとするときその行為に伴うリスクをも含めて瞬時にイメージすることである.自分は何をしようとしているのか,うまくやるにはどんな手を打つかなどを意識することである.リスクがイメージできれば,回避する行動をとることができる.事故防止を考えるとき,どのような状況や背景で人は間違えるのか,あるいは,どのような患者にどのような事故が起こりやすいのかを知ってこそはじめて,個人的にも組織的にも事故防止策が立てられるのであり,医療事故やヒヤリ・ハット事例より事故防止の方策を学ぶことができる.つまり,自分の職場ではどのようなリスクが存在しているのか,また実際に起こっているかを調査し,その内容を把握することが大切なのである.これらのことを受け,本報ではアンケート調査を実施し,放射線業務において発生しているリスク事例について,一般撮影,ポータブル撮影,透視造形検査,および血管造形検査のモダリティについて,その内容と発生原因を事例集としてまとめたので報告する.

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© 2004 公益社団法人 日本放射線技術学会
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