日本放射線技術学会雑誌
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患者参加型NBM(Narrative Based Medicine)の実践を支援するためのインターネットを介した診療所向け電子診療録作成支援システムの構築
大松 将彦橘 英伸梅田 徳男
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2004 年 60 巻 6 号 p. 818-828

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抄録

現在,カルテ開示の法制化や保険制度の抜本的改革など,日本の医療制度が転機を迎えている.日本が誇る国民皆保険制度は世界一の平均寿命の実現に大きく寄与してきた.しかし,薄利多売型医療の構造的欠陥や高齢化による疾病構造の変化により,国民総医療費は増加の一途をたどっている.一方,現在の日本の医療環境下では,対面診療に十分な時間が確保できず,医師・患者ともに不満を抱いており,相互信頼関係の希薄化と医療不信を招いている.このように少予高齢化時代を迎え,21世紀の健全な医療・医学システムには,いわゆる「未病」の時期を認識し,早期発見と自己予防・自己管理という国民的価値観を創出することが大切である.この未病期間の健康コントロール・セルフメディケーションこそが,長期的視野に立った医療費削減や健全な長寿社会の実現につながると考えられている.すなわち,病を末熱に防ぐことが重要であり,受診者と医師・医療スタッフとの対話の促進によって健康に対する自己啓発をすることが欠かせない要素となる.また,生活習慣の改善が医療費削減に寄与する可能性を示唆した研究もある.われわれはこれらの点に鑑み,かかりつけ医によるプライマリ・ケア(ホームドクター制)の普及を狙い,情報通信技術(information technology : IT)と電子診療録の融合に着眼したシステムを開発してきた.受診者からの主訴や経過報告等は,インターネットを介して電子診療録へ直接記録される.このように対面診療を可能な限り排除し,効率的な相互情報交換を可能とさせるシステムを構築し,その運用方法を提案した.これは,ネットワーク医療に関する調査結果の一つである医療者とのコミュニケーションヘの高いニーズに応えるシステムにもなる.そして,電子診療録への患者の直接参加によって,ナラティブ ベイスト メディスン(narrative based medicine : NBM)の具現化を支援することに主眼をおいている.しかし,サーバ設置費用やそのメンテナンス負荷は,診療所においてシステム普及への大きなネックになる.本論文では,NBM実践支援ツールとしてのプロトタイプシステムの構築とその評価結果を示すとともに,診療所等電子化のきっかけともなる第一ステップを提案する.

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© 2004 公益社団法人 日本放射線技術学会
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