論文ID: 2022-1276
眼の水晶体の等価線量限度引き下げの電離放射線障害防止規則への取り入れが行われ,2021年4月から施行となったことから,線量低減は今後放射線領域においてますます重要になる.透視室で使用している防護具に放射線防護クロス(以下,防護クロス)がある.これは主にendoscopic retrograde cholangiopancreatography(ERCP)時のスタッフの被ばくを防護するものである.今回,その防護クロスを清潔領域を要する手技においても使う方法はないかを検討した.泌尿器科の尿管皮膚瘻交換術を想定し,防護クロスは患者頭側とX線管後面は完全に吊り下げ,X線管前面と患者足側を55 cmの長さにして線量率を測定した.その結果,術者の水晶体に関しては10%の防護効果が得られ,検査室内の空間線量分布も大幅に低減した.また,防護クロス内の一部の場所で,防護クロスからの散乱線が発生したが,患者の全身を通しての線量は下がった.特に水晶体に関しては高い防護効果を得られた.使用可能な防護クロスの長さに制限がある場合においても防護クロスの有用性が期待される.