2007 年 68 巻 10 号 p. 2490-2494
症例は, 52歳, 男性. 検診で受けた上部消化管内視鏡検査 (GIF) で胃潰瘍および十二指腸潰瘍と診断され他院でピロリ菌の除菌治療をうけていた. 経過観察のGIFで胃粘膜下腫瘍を指摘され当科を受診した. 来院後に再度GIFを施行し, 生検で胃悪性リンパ腫と診断し手術目的で入院した. 下部消化管内視鏡検査 (CF) でも下部直腸に粘膜下腫瘍を認め, 生検の結果, 直腸悪性リンパ腫と診断した. このため胃全摘および腹会陰式直腸切断術を同時に施行した. 病理組織検査の結果, 胃病変, 直腸病変ともにfollicular lymphomaであった. 退院後, 他院で化学療法施行し無再発生存中である. 胃悪性リンパ腫に直腸悪性リンパ腫を併存した症例は, きわめて稀と思われる. 本症例のように比較的若く体力のある症例では全身に大きな侵襲がかかるが積極的に胃全摘と腹会陰式直腸切断術を同時に行っても耐術可能であり, 術後化学療法を組み合わせることが最良の治療法と思われた.