抄録
われわれは術後8年9カ月目に間置空腸嚢に潰瘍を発症した1例を経験したが, 報告例は見当らない. 症例は40歳, 男性. 1997年3月, 31歳時に食道胃境界部巨大平滑筋腫 (12×8.5×6cm) にて下部食道, 噴門側胃切除術および空腸嚢間置再建法を施行した. 術後経過は良好であったが, 2005年11月27日心窩部痛が出現, 軽快しないため当科を受診した. 緊急上部消化管内視鏡検査にて, 残胃との吻合部から数cm離れた間置空腸嚢後壁部に, 白苔を伴う深い潰瘍が認められた. プロトンポンプ阻害剤を投与し腹痛は3日目に消失した. 潰瘍の治癒傾向は良好であったが, 同部に絹糸の露出が認められた. 間置空腸嚢潰瘍は発症から7カ月目に絹糸が消失し治癒した. この絹糸は空腸嚢作成時に用いたlinear cutter GIAで縫合, 切離した部の補強に施行した漿膜筋層縫合の絹糸であり, 縫合糸が原因となった縫合線上潰瘍と考えられた. 現在, 患者は投薬なく無症状で経過観察中である.