抄録
症例は21歳, 男性. 労災事故にて左前胸部と右背部に鈍的外傷を受傷し他院に救急搬送. CTにて外傷性肝腎損傷があったため当院に救急搬送された. CT上, 受傷数時間での肝被膜下血腫の増大はあったものの, 全身状態, 血液検査データに著変なく経過観察とした. 受傷3日目に肝被膜下血腫の急速な増大を認め肝腎不全となったが, ヨード造影剤を用いた血管造影でAP shunt (arterioportal shunt) の存在は示唆されたものの出血部位の同定がされなかったためTAE (transcatheter arterial embolization) は施行せず輸血やCHDF (continuous hemodiafiltration) などの保存的治療を行い, その後徐々に軽快をみせた. 外傷性肝損傷において, 被膜下血腫増大による肝不全例, また被膜下血腫症例に対するTAEの報告は非常に稀であるが, 本症例の場合, 炭酸ガスDSA (digital subtraction angiography) も含めた早期の血管造影・IVR (interventional radiology) により被膜下血腫増大を防げた可能性もあったのではないかと考えられた.