2007 年 68 巻 3 号 p. 574-577
症例は67歳の女性で, 2002年5月に早期穹窿部胃癌に対しendoscopic submucosal dissection (以下, ESD) を施行時, 胃壁, 横隔膜を穿孔し気胸となり, クリップ縫縮術・胸腔内ドレーン留置にて改善した. 施行後18カ月目に左季肋部痛を認め近医受診し, 翌日当科紹介となった. 胸部X線写真では左胸腔内の消化管ガスを認め, 胸部CTでも左胸腔内に胃が嵌入していた. 上部消化管内視鏡検査では, 食道・胃接合部横に胃穹窿部が嵌頓していた. 以上より, 横隔膜ヘルニア嵌頓の診断で同日に緊急手術を施行した. 開腹所見は横隔膜にヘルニア孔を認め, そこに胃穹窿部が嵌頓していた. ヘルニア門に小切開を加え整復した. 胃壁の血流も改善したため胃切除は行わず, 横隔膜ヘルニア門を閉鎖し手術を終了した. 早期穹窿部胃癌に対するESDの合併症として, 解剖学的位置より胃穿孔に伴う横隔膜穿孔および気胸, 長期的には横隔膜ヘルニアなどの危険性もあり注意が必要である.