日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹部鈍的外傷後形成された中結腸動脈仮性動脈瘤が5年後に破裂したと考えられた1例
田村 光鯉沼 広治杉浦 功一岡田 真樹小島 正夫
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2007 年 68 巻 3 号 p. 612-616

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抄録

症例は63歳, 男性で腹痛を主訴に当科受診した. 貧血を認め, 一時的な血圧低下も認めた. 下血は認めなかったが, CT上腹腔内に液体貯留を認め, 穿刺で血液と確認した. 右上腹部に動脈瘤様構造物を認めたが, 血管撮影では瘤や出血部位は描出されず, 5年前の腹部鈍的外傷以外に既往なく全身状態も安定していたので経過観察した. 2週後の血管撮影で中結腸動脈末梢に動脈瘤を認めた. 塞栓術では, 腸管壊死に陥る可能性が高いため, 開腹し動脈瘤を含む血腫と右結腸を切除した. 組織学的には腸間膜内に径3cm大の血腫形成を認め, 周辺の小動脈に部分的な中膜および内弾性板の欠損, fibro-cellular tissueへの置換を認めた. 他に明らかな原因を特定できず, 5年前の外傷による仮性動脈瘤の形成が疑われた. 上腸間膜動脈分枝の外傷性仮性動脈瘤の本邦論文報告は, 本編を含め4例のみであり, 本例のように5年間の長期経過後に破裂したと考えられる症例は, 本邦では初めてである.

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© 2007 日本臨床外科学会
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