日本臨床外科学会雑誌
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症例
腸管壊死を伴った特発性上腸間膜静脈血栓症の2例
田村 孝史寺澤 孝幸水野 豊岡本 道孝佐藤 雅栄
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2007 年 68 巻 3 号 p. 617-622

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抄録

上腸間膜静脈血栓症は無症状のものから, 急激な腸管壊死に至ることもある比較的稀な疾患である. 今回腹部造影CT検査で上腸間膜静脈血栓症と診断し, 外科的加療を行い救命しえた2例を経験したので報告する. 症例1は50歳, 女性, 症例2は28歳, 男性, 2例とも腹痛を主訴に来院した. 腹部造影CT検査で上腸間膜静脈と門脈内に透亮像を認め, 腸管の浮腫および腹水を認めたため腸管壊死を伴う上腸間膜静脈および門脈血栓症と診断し開腹術を施行した. 壊死腸管の切除を行い, 症例1は2期的腸管吻合, 症例2は1期的腸管吻合を施行した. 術後はヘパリンの持続静注を行い, 経口摂取開始後はワーファリンの内服による抗凝固療法に変更した. 後日の血液凝固・線溶系の検査結果に異常値を認めず特発性上腸間膜静脈血栓症と考えられた. 2例とも肝機能悪化, 血栓の増加を認めず経過良好で現在当科外来通院中である.

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© 2007 日本臨床外科学会
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