2007 年 68 巻 3 号 p. 607-611
腸重積を合併した盲腸リンパ管腫の稀な1例を経験したので報告する. 症例は30歳の女性で, 心窩部痛を主訴として入院した. 入院時, 白血球数とCRPの軽度増加以外に, 一般血液検査や腫瘍マーカー (CEA, CA19-9) に異常所見はみられなかった. 腹部超音波検査と腹部CTにて右側腹部にtarget signを認め, 腸重積が疑われた. 緊急大腸内視鏡検査にて腸重積は整復された. 内視鏡所見では, 腸重積の整復後に暗赤褐色調で表面平滑な柔らかい粘膜下腫瘍がBauhin弁の対側の盲腸にみられた. 入院後1週間目に, 盲腸の粘膜下腫瘍の術前診断にて回盲部切除を施行した. 肉眼所見では, 腫瘤の大きさは3cmで, 割面は嚢胞状, 内容は黄色の漿液であった. 病理組織学的は盲腸の嚢状リンパ管腫であった. 大腸癌のリンパ管腫が原因で腸重積をきたした本邦報告は自験例を含めて16例と稀であり, 若干の文献的考察を加えて報告した.