日本臨床外科学会雑誌
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症例
選択的動脈内カルシウム注入刺激法および画像診断により局在が確認されたインスリノーマの1切除例
香山 誠司宮下 薫畠山 勝義
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2007 年 68 巻 3 号 p. 671-676

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抄録

選択的動脈内カルシウム注入刺激法 (以下ASVS) および術前, 術中の診断にて腫瘍の局在を明らかにし, 外科的に摘出しえたインスリノーマの1例を報告する. 67歳, 女性. 意識障害のため救急搬送され当院初診. 血糖は36mg/dlと低値で, グルコースの急速静注により意識は速やかに改善した. dynamicCT, MRI, 腹部血管造影検査にて膵鈎部に径1.5cmの腫瘍を認めた. ASVSにて上腸間膜動脈領域での血中インスリン値 (以下IRI) の著明な上昇を認めた. 術中の超音波検査, 触診にて腫瘍を確認し, 腫瘍摘出術を行った. また, 腫瘍摘出前後に末梢血血糖, IRI, 門脈血IRIを測定し, 腫瘍の完全摘出を確認した. 術後に低血糖発作等の症状を認めていない. インスリノーマは多くが良性で切除により良好な予後が期待できるため, 膵機能を可及的に温存した外科的切除が第一選択である. このため, 正確な局在診断と術中の切除の確認が重要と思われ, 今後の症例の蓄積が期待される.

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© 2007 日本臨床外科学会
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