日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
受傷の約1カ月後に発症した遅発性脾破裂の1例
米沢 圭下松谷 匠中村 誠昌白石 享藤野 光廣丸橋 和弘
著者情報
キーワード: 脾破裂, 遅発性, 外傷
ジャーナル フリー

2007 年 68 巻 3 号 p. 677-681

詳細
抄録

症例は57歳, 男性. 交通事故により受傷し左肋骨骨折・左血胸と脾臓上極の小さな単純型実質損傷を認めた. 循環動態は安定しており保存的に加療した. 入院3日目の腹部CTにて止血を確認し, 入院16日目に退院した. 受傷から36日後, 突然の左上腹部激痛にて搬入された. CTにて腹腔内に多量の出血と脾下極に偏在する広範囲な実質損傷を認めた. 遅発性の脾破裂と判断し緊急開腹術にて脾臓を摘出した. 脾下極には初回入院時には認めなかった広範な実質内の血腫が認められ一部が被膜外へ穿破していた. 近年, 脾損傷の治療として非手術的療法が増加しているが, 治療後の遅発性破裂に注意する必要がある. 遅発性脾破裂の機序は現在のところ不明であるが, 当症例では脾内血腫が穿破し腹腔内への出血が起こったと考えられた. 受傷後2週間以内の遅発性破裂が多いので, その間は厳重な経過観察が望ましく, 止血確認後も定期的な画像検査が必要であると考えられた.

著者関連情報
© 2007 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top