2007 年 68 巻 7 号 p. 1858-1861
減張切開により患指を救済したマムシ咬傷の1例を経験した. 症例は55歳, 男性. 野外作業中マムシに咬まれ受傷. 受傷後約2時間で当院受診. 来院時にGrade IIIであったため, 直ちにマムシ抗毒素血清を投与した. 来院後30分で腫脹は上腕まで達したため, 受傷後4時間で手術を施行した. 咬まれた示指の橈側を側正中切開し開放したところ, 指尖部に血行が再開した. 咬傷部の皮下は, 組織内の溶血変化がみられた. 手背の切開部より間質液を大量に排出した. 腫脹している前腕の筋膜も切開した. 術後に腎不全等の臓器障害を認めなかった. 機能面では, 縫合閉鎖後に患指の腫脹は徐々に減少し, 術後8カ月で受傷前と同等になり, 瘢痕拘縮もなく, 手指の可動域はfullで, 日常生活, 仕事に支障なく, 機能障害は全く認めなかった. 減張切開による組織液の排出が臓器障害予防と患指温存に有効であったと思われた.