2008 年 69 巻 2 号 p. 337-340
症例は76歳,女性.2006年5月に上行結腸癌にて手術を施行,術後補助化学療法を行なった後経過観察となっていた.2007年4月末に胸部CTにて異常陰影を認めたため当院受診となった.画像上,両肺野に多発する腫瘤を認めた.腫瘤は充実性のものと空洞形成を伴うものとがあり,空洞壁の厚さは最大で約3mmと薄かった.臨床経過より大腸癌肺転移を疑い手術を施行した.胸腔鏡補助下にて部分切除が可能であった充実性の腫瘤と空洞形成を伴う腫瘤を切除した.術中迅速病理検査では切除したすべての腫瘤に中分化腺癌を認め大腸癌の肺転移との診断であり,残りの腫瘤の切除は行わず手術を終了した.大腸癌を含めた悪性腫瘍の肺転移巣における薄壁空洞形成は稀ではあるが,悪性腫瘍の既往がある患者に薄壁空洞形成を伴う肺腫瘤を認めた場合には肺転移の可能性も念頭において診断および治療を行うことが重要であると考えられた.