日本臨床外科学会雑誌
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症例
蛋白漏出性胃腸症を合併した多発胃癌の1例
吉田 直東風 貢渡邊 慶史望月 晋大久保 貴生高山 忠利
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2008 年 69 巻 2 号 p. 365-369

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抄録
今回,われわれは低蛋白血症を合併した多発胃癌の症例を経験したため報告する.症例は80歳,男性.上腹部痛を主訴に近医を受診,精査加療目的で当科に紹介となった.理学所見では両下肢に軽度の浮腫,血液検査では高度の低蛋白血症(TP 4.9g/dl,Alb 1.8g/dl)を認めた.上部消化管内視鏡検査で胃体部の1型腫瘍と前庭部の2型腫瘍を認め,生検にて共にgroupV,adenocarcinoma,多発胃癌と診断した.肝・腎機能は異常なく,糞便中のα1-アンチトリプシン排泄量は470mg/day,α1-アンチトリプシンクリアランスは22.5ml/dayと共に上昇していた.術前に高カロリー輸液などの栄養管理を行ったが低蛋白血症は改善せず,胃癌からの蛋白漏出と診断,胃全摘術,D2郭清を施行した.腫瘍は10cmの表面がカリフラワー状に分葉した1型腫瘍と9cmの2型腫瘍で,1型腫瘍は中分化型腺癌で深達度sm2,2型腫瘍は乳頭状増殖を成す乳頭腺癌で深達度seであった.術後の経過は良好で,術後16日目には低蛋白血症はTP 6.8g/dl,Alb 2.9g/dlまで改善した.本症例のように蛋白漏出性胃腸症が悪性腫瘍に続発する場合は術前の栄養管理による改善が困難な場合が多く,原発巣の切除を早期に施行することが最も確実な治療方法である.
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© 2008 日本臨床外科学会
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