抄録
両側閉鎖孔ヘルニアの両側自然還納例を経験したので報告する.症例は84歳,女性.腹痛,嘔気を主訴に外来を受診.腹部単純X線像にてイレウスを呈していた.原因精査目的にて緊急腹部造影CT検査を施行したところ,両側閉鎖孔に軟部組織陰影が認められ両側閉鎖孔ヘルニアと診断した.緊急手術を考慮したがCT検査後に排便が認められ,また,症状の改善も認められたため初回CT検査から2時間後に再度CT検査を施行した.2回目のCT検査所見では両閉鎖孔の軟部組織陰影は消失し,腸管の拡張像も改善していたため両側が自然還納したものと考えられ,後日,待機的に手術を行った.閉鎖孔ヘルニアにおいて自然還納の報告例はあるものの,閉鎖孔ヘルニアの両側自然還納例の報告は認められず,極めて稀な症例と考えられた.