2008 年 69 巻 7 号 p. 1643-1646
38歳,男性.11年前に気管支壁発生神経鞘腫にて後側方切開,第5肋間開胸で,中間幹環状切除,肋間筋弁による吻合部被覆術を行った.2006年10月頃から微熱と前回の術創部に一致した疼痛を自覚,胸部CTで肋骨融解像を伴う胸壁の腫瘤様陰影を認めた.同部位に対するCTガイド下経皮針生検では肉芽腫と診断されたが,後日,深部の穿刺液から黄色ブドウ球菌を検出した.胸壁膿瘍と診断したが胸壁腫瘍も完全には否定出来ず,2007年2月手術を施行した.右第6肋骨床に沿う膿瘍形成があり胸腔とは交通がなく,術創の晩期膿瘍と最終診断し,掻爬・ドレナージを行い治癒せしめた.悪性腫瘍との鑑別が困難な胸壁膿瘍の報告は少なくないが術後11年を経た晩期創部感染は過去に報告はない.病因論的観点から若干の考察を加え報告する.