日本臨床外科学会雑誌
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症例
潰瘍性大腸炎術後4年目に発症した胃壁膿瘍の1例
山上 裕子甲斐 康之藤井 眞藤川 正博根津 理一郎吉川 澄
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キーワード: 胃壁膿瘍, 潰瘍性大腸炎
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2008 年 69 巻 9 号 p. 2235-2239

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抄録

症例は65歳,女性.1998年10月に潰瘍性大腸炎・直腸癌の診断にて大腸全摘・回腸肛門管吻合術を施行し,良好に経過していた.2002年11月の上部消化管造影,腹部CTにて,胃体下部大彎側に約6cm大の内部に嚢胞性変化を伴う胃粘膜下腫瘍を指摘された.2003年5月,幽門側胃切除術を施行した.摘出標本の腫瘍部分粘膜は正常であったが,穿刺にて約2mlの膿性排液を認めた.腫瘍径は70×50mmで,割面にて被膜を伴う膿瘍腔があり,さらに厚い白色の線維層に覆われていた.排液培養の結果,Methicillin resistant Staphylococcus aureus(MRSA)が同定され,胃壁膿瘍と診断された.前回の術中操作との関連も疑われるが,原因を問わず胃壁膿瘍は非常に稀である.術前診断しえた場合,ドレナージのみで治癒した可能性もあり,手術既往のある症例において胃粘膜下腫瘍では,胃壁膿瘍も鑑別すべき診断の一つと思われた.

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© 2008 日本臨床外科学会
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