2008 年 69 巻 9 号 p. 2240-2244
われわれは胃癌術後に癌性髄膜炎を発症した3症例を経験した.症例1は66歳男性で,残胃癌にて残胃全摘術施行.術後2年2カ月後に頭痛,脱力および嘔気を主訴に入院.髄液穿刺にて癌性髄膜炎と診断されるも,入院後第27病日に死亡した.症例2は51歳男性で,胃癌にて幽門側胃切除術施行.術後6カ月後に嘔気,嘔吐および眩暈を主訴に入院.MRIおよび髄液穿刺にて癌性髄膜炎と診断されるも,入院後第52病日に死亡した.症例3は63歳女性で,胃癌の診断にて幽門側胃切除術施行.術後7カ月後に化学療法目的に入院.入院後よりふらつき,嚥下障害および嘔気出現.髄液穿刺にて癌性髄膜炎と診断されるも,入院後第37病日に死亡した.癌性髄膜炎は全癌患者の約4%に発症し,発症後の平均予後は約1カ月と極めて悪い.進行癌の経過中に腹水等を認めない補正困難な低ナトリウム血症を認めた場合,癌性髄膜炎を疑い速やかな髄液穿刺の施行等による早期診断が重要であると考えられた.