2009 年 70 巻 4 号 p. 1071-1076
胃髄様癌は特徴的な組織像を呈しEBウイルスとの関連が指摘されている稀な疾患である.今回われわれは多発肝転移を伴う高度進行胃髄様癌に対しS-1+CDDPによる術前化学療法を施行し組織学的CRを得た1例を経験した.症例は46歳,男性.心窩部痛を主訴として来院した.胃内視鏡検査にて胃体上部後壁に3'型腫瘍を認め,腹部CTおよびエコー検査にて所属リンパ節転移と多発肝転移を指摘された.生検組織の病理診断は胃髄様癌(Lymphoepithelioma-like carcinoma)であり腫瘍細胞はin situ hybridizationにてEBER(EB virus-encoded RNA)陽性であった.S-1+CDDPによる術前化学療法を計5コース施行後,D2郭清を伴う胃全摘術を施行した.切除標本の病理組織検査では原発巣,所属リンパ節ともに強い線維化が見られ腫瘍細胞の残存は認められなかった.