抄録
S状結腸癌の切除標本に日本住血吸虫卵が併存した症例を経験したので報告する.症例は77歳,女性.22歳まで静岡県に在住.便潜血陽性を主訴に当院受診した.大腸内視鏡検査にてS状結腸癌と診断し,S状結腸切除術を施行した.病理所見はtub2,ss,ly1,v0,n0,Stage IIであった.また,切除標本全長にわたり,粘膜下層から筋層に日本住血吸虫卵を多数認めた.手術後7カ月を経過した現在も残存腸管に再発なく,無再発生存中である.日本住血吸虫症と大腸癌の疫学的関連性が報告されているが,本症例の標本では虫卵の分布は非癌部主体であり,虫卵の存在と発癌に関与を示唆する所見は認めなかった.