抄録
30歳,男性.前胸部(胸骨柄左外側)と右側腹部(上前腸骨棘付近)を銃撃され緊急搬送された.意識清明,血圧56/33mmHg,脈拍数129回/分,呼吸数36回/分でショック状態,心エコーで心嚢内液体貯留はなかったが,右胸腔ドレナージ後,来院18分,受傷32分で緊急手術とした.胸骨正中切開で開胸,縦隔血腫,心嚢内血腫,左胸膜損傷は認めず,胸骨骨折と右内胸動脈断裂,右肺損傷を認め,結紮止血と胸腔ドレナージで対応した.腹腔内では,S状結腸間膜,盲腸損傷を認め,縫合止血,縫合閉鎖した.左内腸骨静脈付近から仙骨前面に出血が持続し止血困難で,ガーゼ圧迫留置とした.術後43時間でガーゼを除去,第35病日に軽快退院となった.銃創は本邦では稀な外傷形態だが,出血や致命的臓器損傷など超緊急処置を要することも多い.術前に決定した治療戦略に固執することなく,手術中も厳重な状態観察を継続し,damage controlへの戦略変更など柔軟な対応が重要と思われた.