日本臨床外科学会雑誌
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症例
多発筋痛症様症状を呈した肺癌肉腫の十二指腸転移再発の1切除例
橋本 健吉廣瀬 盟子原武 譲二中山 正道島 一郎磯 恭典
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2010 年 71 巻 3 号 p. 706-711

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抄録

症例は68歳,男性.全身痛の症状があり,整形外科でリウマチ性多発筋痛症と診断され,ステロイド治療を開始.一旦軽快したが,疼痛が再燃していた.精査の結果,左下葉の肺腫瘍を指摘され,左肺下葉切除を施行した.病理診断では,扁平上皮癌と血管肉腫を含む癌肉腫であった.手術後に疼痛,炎症反応が劇的に改善したが,術後9カ月後に再び疼痛が増悪,炎症反応も上昇した.精査の結果,十二指腸に肺癌肉腫の単発転移巣を認め,膵頭十二指腸切除術を施行した.術後再び疼痛や炎症反応は改善,現在まで再発を認めていない.本症例は稀な血管肉腫成分を含む肺癌肉腫,および稀なその十二指腸転移再発の切除例である.また,臨床的には全身性疼痛を認め,腫瘍と疼痛の消長,CRP,IL-6値の増減がよく相関していた.悪性腫瘍によるリウマチ性多発筋痛症類似の症状は稀に見られるが,癌肉腫による報告は自験例が初めてである.

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© 2010 日本臨床外科学会
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