日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝膿瘍を契機に発見された直腸癌の1例
矢内 勢司今田 世紀權 雅憲
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キーワード: 肝膿瘍, 直腸癌
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2010 年 71 巻 3 号 p. 785-789

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抄録

症例は57歳,男性.1カ月前に,全身の関節痛と下痢を主訴に近医受診し,通院加療で症状軽快した.2日前より38~40℃台の発熱みられ,血液検査上,高度の炎症反応を認めたため,当院を紹介された.腹部CT,超音波検査の結果,肝膿瘍の診断のもと緊急入院となった.入院後,メロペネムの投与を開始したが,解熱傾向が見られなかったため,経皮経肝膿瘍ドレナージ(PTAD)を施行した.黄色膿性液を吸引したが細菌検査,細胞診ともに陰性であった.PTAD施行翌日より38℃以下まで解熱傾向を示し,症状,炎症反応ともに改善したため,並行して肝膿瘍の原因検索を施行した.注腸検査で,Rb前壁に径4cm大の潰瘍性病変を認め,直腸癌の診断で,Miles手術を施行した.病理組織学的には,中分化型腺癌で,深達度は,Aで,リンパ節転移や腹膜播種,遠隔転移は見られず,StageIIであった.肝膿瘍の原因検索として,可及的早期の消化管検索が重要と考えられた.

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© 2010 日本臨床外科学会
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