2010 年 71 巻 5 号 p. 1200-1205
症例は56歳,女性.近医にて慢性腎不全による血液透析中,2009年8月発熱・咳嗽認め肺炎の診断にて同院に入院した.翌日より腹痛,血圧の低下を認め,腹部CT検査にて消化管穿孔が疑われ,精査加療目的に当科へ紹介となった.来院時ショック状態で,腹部全体に圧痛を認め,右下腹部に反跳痛・筋性防御を認めた.腹部CT検査にてfree airを認め,大腸の壁肥厚と拡張を認めたが,穿孔部位は特定できなかった.消化管穿孔の診断で緊急開腹手術を施行したところ,小腸から大腸にアミロイドの沈着を認めた.特に盲腸が著明に肥厚し拡張しており,同部に2カ所穿孔を認めた.回盲部切除後,単孔式回腸人工肛門を造設した.病理所見でも腸管壁にアミロイドの沈着を認め,これによる穿孔が示唆された.術後経過は良好であった.消化管アミロイドーシスによる大腸穿孔は稀とされているが,発症時には重篤化し致死率も高いため,早急な対応が必要である.