2010 年 71 巻 5 号 p. 1232-1235
症例は,62歳,男性.後頭部打撲および擦過創の診断で入院.翌日,義歯を誤嚥したため,腹部X線で確認したところ義歯に鋭的な金属部分が認められない点から腸管粘膜損傷の可能性は低いと考えられたため経過観察とした.義歯の自然排泄を期待したが,第7病日より嘔気,嘔吐出現し,第8病日,腹部X線,腹部CT施行にて義歯による腸閉塞と診断し,緊急開腹術を施行した.開腹所見にて,肝彎曲部の上行結腸に腫瘤が触知され,その口側に通過不能となった義歯を触知したため,大腸癌の根治術とともに腸閉塞解除術を施行した.
切除標本では,大腸癌は深達度がSEで,リンパ節転移はなかったが,軽度のリンパ管侵襲を認めた.今回,われわれは,義歯による腸閉塞の診断で開腹し,大腸癌を発見したまれな1例を経験したので,報告する.