日本臨床外科学会雑誌
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症例
十二指腸球部への胆石嵌頓による胃排泄障害(Bouveret症候群)の1例
金子 奉暁中崎 晴弘種村 宏之竹山 照明横井 正秀中崎 久雄
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2010 年 71 巻 5 号 p. 1269-1275

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抄録

胆石が十二指腸球部に嵌頓し起こる胃の排泄障害はBouveret症候群とよばれ,まれな疾患である.われわれは,Bouveret症候群の1例を経験したので報告する.症例は89歳,女性.嘔吐を主訴に来院した.腹部CT検査でpneumobiliaと十二指腸球部に存在する結石を認め,上部消化管内視鏡で,同部に嵌頓した結石を認めた.Bouveret症候群の診断で,手術を施行した.高齢で全身状態不良,胆嚢周囲の強固な癒着を認めたため,手術は胃前庭部切開による載石術のみを行った.術後経過は良好で,1カ月で退院した.6カ月後のCTおよび上部消化管内視鏡で瘻孔の閉鎖が確認された.当疾患の治療に関しては,瘻孔の処置の有無が問題になる.本邦報告例の検討では,処置しなかった瘻孔はいずれも1年以内に自然閉鎖しており,必ずしも瘻孔を閉鎖する必要はないと思われる.全身状態および局所の状態から,手術方法は決めるのが妥当と考える.

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© 2010 日本臨床外科学会
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