日本臨床外科学会雑誌
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症例
進行胃癌との鑑別が困難であった好酸球性胃炎の1手術例
藤城 健赤井 崇鍋谷 圭宏川平 洋林 秀樹松原 久裕
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2010 年 71 巻 6 号 p. 1477-1482

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抄録

症例は75歳,女性.心窩部痛と体重減少を主訴に近医で上部消化管内視鏡検査を受けたところ著明な胃幽門部の狭窄所見を認め,生検でGroupIVの診断となり胃癌の疑いにて当科紹介となった.当科での諸検査においても悪性疾患の確定診断には至らなかったが,幽門部狭窄による臨床症状も強く開腹手術を施行した.術中迅速病理診断で胃癌腹膜播種が疑われたが,臨床症状の改善目的に幽門側胃切除+Roux-Y再建術を施行.術後病理診断は好酸球性胃炎で,播種性と思われた膵前面小結節は膵β細胞の過形成と診断された.好酸球性胃腸炎は全消化管に出現しうる原因不明の炎症性疾患であり,末梢血好酸球増多や消化管への好酸球浸潤などが臨床的特徴とされ,保存的治療にて軽快することも多い.一方,今回のわれわれの症例のように好酸球性胃腸炎の臨床的特徴に乏しく診断・治療に手術を要する症例もまれながら存在する.自験例は検索範囲内で本邦12例目の好酸球性胃炎の胃手術症例であった.

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© 2010 日本臨床外科学会
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