日本臨床外科学会雑誌
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症例
食道癌術後の横隔膜ヘルニアによりイレウスをきたした1例
加勢田 馨出江 洋介加藤 剛三浦 昭順宮本 昌武本多 通孝
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2010 年 71 巻 7 号 p. 1754-1758

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抄録

症例は52歳,男性.2006年9月,胸部食道癌T2N0M0 StageIIに対し鏡視下食道亜全摘・胸骨後胃管再建術・3領域郭清施行.右頸部リンパ節再発に対しCRTを施行後,経過観察中であった.2008年4月,突然の上腹部痛を主訴に当院救急外来受診.CTにて食道裂孔をヘルニア門とした横隔膜ヘルニアの所見を認めた.食道癌術後の横隔膜ヘルニアによるイレウスと診断し緊急手術を施行した.術中所見では,前回の手術操作で開大した食道裂孔がヘルニア門となり,肝外側区域・右横隔膜脚と癒着した横行結腸と,その背側から小腸が左胸腔内へ脱出していた.腸管に明らかな壊死所見なく,切除は施行せず,食道裂孔を縫合閉鎖した.食道癌術後に生じる横隔膜ヘルニアは,稀であるが重大な合併症である.本症例では,術中に食道裂孔を開大したこと,鏡視下手術であったため腹腔内の癒着が少なかったこと等が発症原因と考えられた.

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