抄録
症例は49歳,精神発達遅滞のある男性.腹痛を主訴に近医を受診し,腹部レントゲン検査で消化管異物が疑われたため,当院を紹介された.来院時,発熱と炎症所見の上昇,臍上部に圧痛を認めたが腹膜刺激症状は明らかでなかった.腹部CT検査で小腸内に異物を認め,十二指腸周囲や後腹膜腔にガス像および液体貯留を認めた.当初,異物の特定ができなかったが施設スタッフへの問診で1カ月前より義歯が紛失していたことが判明し,義歯による小腸内異物,十二指腸穿孔と診断し,緊急で小腸内異物摘出,十二指腸穿孔部閉鎖術を施行した.摘出した異物は,径7cmの有鈎義歯であった.異物誤飲の際にはその異物の特定が重要となるが,精神発達遅滞を背景とした場合,本人への問診は困難であることも多いため,家族や入所施設スタッフへの詳細な問診も重要であると考えられた.