2010 年 71 巻 7 号 p. 1897-1900
症例は84歳,女性.発熱と咳嗽,腰背部痛を主訴に当院入院となり,MRSA肺炎の診断で塩酸バンコマイシン(VCM)等の抗生剤治療を行った.肺炎は軽快したが炎症反応の改善に乏しく,腰背部痛も持続していたため腹部CT,脊椎MRIを施行した.その結果,L1-2椎体の化膿性脊椎炎,硬膜外膿瘍および連続する両側腸腰筋膿瘍を認めた.CTガイド下に腸腰筋膿瘍をドレナージし,MRSAが検出され,MRSA化膿性脊椎炎と診断した.ドレナージ後よりVCMを継続投与したが一度低下した炎症反応が再上昇し,VCM不応性と判断し,骨軟部組織移行性に優れたリネゾリド(LZD)に変更した.LZDを28日間投与した時点でCRPの陰性化は得られなかったが,以後抗生剤を投与せず経過観察した.その後8カ月が経過したが化膿性脊椎炎の再燃を認めず,臨床的寛解を得たと判断した.