日本臨床外科学会雑誌
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原著
トリプルネガティブ乳癌に対する術前化学療法の治療効果と予後に関する検討
大谷 彰一郎河内 麻里子伊藤 充矢高田 晋一松浦 博夫檜垣 健二
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2011 年 72 巻 12 号 p. 2995-3002

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抄録

トリプルネガティブ(TN)乳癌は化学療法に奏効するが予後不良な乳癌と言われている.今回,われわれはTN乳癌に対する術前化学療法(NAC)の治療効果と予後の関係を明らかにするために,2002年から2010年までに当院で原発性乳癌に対してNAC施行した335例を,TN乳癌と非TN乳癌に分類し,比較検討した.病理学的完全奏効(pCR)割合は,TN乳癌は28.1%,非TN乳癌が18.9%とTN乳癌でpCRが得やすい傾向にあったが有意差は認めなかった.またNACでpCRを得た症例のTN乳癌と非TN乳癌の無再発性生存率(DFS),全生存率(OS)は有意差を認めず良好であった.一方,遺残癌を認める症例ではTN乳癌と非TN乳癌ではDFSでは差を認めないが,OSでは有意差を持ってTN乳癌が悪かった(p<0.01).TN乳癌のNACで癌の遺残を認めた症例は予後不良が予測され厳重な注意が必要である.

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