日本臨床外科学会雑誌
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症例
膿胸との鑑別を要した原発性肺癌の1例
松田 英祐岡部 和倫山本 寛斉平澤 克敏杉 和郎
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2011 年 72 巻 6 号 p. 1427-1430

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抄録

症例は61歳,男性.他院にて膿胸と診断され加療していたが,発熱等の炎症反応が軽快しないため当院へ紹介となった.左胸水と白血球増加を認めた.膿胸に対する治療に反応しておらず,血清中の顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)が高値であったため胸腔鏡手術を行った.胸腔内には壊死物質が貯留しており,これを除去した後,壁側胸膜の生検を行った.病理組織所見では肺原発巨細胞癌であった.化学療法を行ったが,初診から8カ月で原病死した.一般に胸膜播腫を伴う肺癌の診断はさほど困難ではない.しかし自験例では肺内の腫瘤は明らかでなく,膿胸との鑑別が必要であった.胸水貯留症例で治療効果が不十分な場合には速やかに胸腔鏡手術を行う必要がある.

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© 2011 日本臨床外科学会
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