日本臨床外科学会雑誌
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症例
術中小腸内視鏡によって診断した多発性隔膜様小腸狭窄症の1例
宇治 誠人平松 和洋加藤 岳人柴田 佳久吉原 基
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2012 年 73 巻 11 号 p. 2874-2879

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抄録

症例は75歳,女性.慢性関節リウマチのためNon Steroidal Anti Inflammatory Drug(以下,NSAID)を常用していた.腹痛と嘔吐のため受診し,黒色吐物と貧血が見られ上部消化管内視鏡を行ったが明らかな出血源はなかった.CT検査で小腸閉塞を認めたため入院となったが,黒色便と貧血の進行があり,小腸出血と判断して試験開腹術を施行した.小腸全体に多発する節状の硬結を触知し,盲腸を切開して内視鏡を挿入すると回腸に全周性の膜様狭窄を認めた.内視鏡は通過しなかったが,排便があったことと小腸内に血液の貯留がないことから閉腹した.しかし腸閉塞が再燃し,再手術を施行した.空腸より内視鏡を挿入して全小腸内を観察した.空腸に高度狭窄が2箇所ありこれらを含めた小腸を部分切除した.本症例はNSAID長期使用による多発小腸狭窄症考えられ,術中内視鏡を用いることで小腸の大量切除を回避できた.

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© 2012 日本臨床外科学会
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