日本臨床外科学会雑誌
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症例
術後乳糜漏・肺塞栓症・ヘパリン起因性血小板減少を併発した甲状腺癌の1例
後藤 航柏木 伸一郎小野田 尚佳亀谷 直樹長谷 一郎笠松 慶子平川 弘聖
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2012 年 73 巻 12 号 p. 3048-3051

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抄録

急性肺動脈塞栓症(PE)は,周術期の合併症として知られ,ガイドラインが整備され予防策も講じられているが,治療に用いられるヘパリンに起因する血小板減少症(HIT)が,最近注目されている.甲状腺癌術後に発症したPEの治療中にHITを併発した症例を経験した.76歳女性.甲状腺左葉切除,リンパ節郭清術を行った.術後3日目,突然の呼吸苦でPEを発症,ヘパリン投与により軽快傾向にあったため,7日目に投与を中断し,手術創部の血腫除去と乳糜漏に対する胸管結紮を行い,11日目に投与を再開したところ,血小板が3.5万/μlへ急激に減少しHIT II型と診断した.ヘパリンを中止し,アルガトロバンを開始したところ血小板は回復,PEも軽快し,ワーファリンを開始後,アルガトロバンを終了した.術後6カ月目,ワーファリンを内服中でPEは消失している.PE,HITの発症予防,早期治療の重要性を再認識した.

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© 2012 日本臨床外科学会
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