2012 年 73 巻 12 号 p. 3315-3319
多発性骨髄腫と消化器癌の同時性重複は比較的稀である.症例は53歳男性.健康診断でS状結腸癌を指摘され,手術目的で当科を紹介受診した.S状結腸癌に対し腹腔鏡補助下高位前方切除術を施行した.術後4日目に38℃台の発熱と汎血球減少症を認め,薬剤性障害を疑い投薬を全て中止した.術後2カ月目に腹痛,全身倦怠感が出現し緊急入院した.腹部CTで胸腰椎と骨盤骨に多発低濃度域を認め,尿中Bense Jones蛋白が陽性であり,多発性骨髄腫と診断された.術前検査で軽度の尿蛋白,貧血を同時に認めた際には,骨病変の有無を評価し,周術期管理にも気をつけるべきと思われた.