抄録
症例は77歳,男性.S状結腸癌の術前CTで主膵管の拡張がみられたため経過観察していたところ,切除1年後の腹部CTで3cm大の膵頭部腫瘍を認めた.内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)では膵頭部で主膵管が完全閉塞しており,膵癌の診断で膵頭十二指腸切除術(PD)を行った.病理検査で退形成性膵管癌(紡錘細胞型)Stage IIIと診断された.術後経過は良好であったが,腫瘍後面の剥離断端陽性のため,ゲムシタビンを投与した.PD後8カ月目にS状結腸癌の肺転移を認め,右肺上葉・中葉切除術を施行した.術後S-1を投与していたが,食欲不振のため10カ月で中止し経過観察とした.現在まで再発なく術後4年生在中である.退形性膵管癌には長期生存例の報告は少なく,紡錘細胞型では3年以上の生存例の報告は本邦でこれまでにない.本症例の長期生存を可能にした臨床的また組織学的特徴を推察し,文献的考察を加えて報告する.