2012 年 73 巻 3 号 p. 725-729
症例は73歳,女性.2008年12月に左大腿内側の疼痛を主訴に当院を受診した.CT所見より左閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断し,全身麻酔下に緊急手術を施行した.手術は開腹アプローチで行い,左閉鎖孔ヘルニアに対してメッシュプラグを使用して修復術を施行した.術後経過良好で退院したが,初回手術から23日後,右大腿内側の疼痛を主訴に,再度当院を受診した.CTで右閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断し,緊急手術を施行した.左側と同様,全身麻酔下,開腹アプローチで手術を行い,メッシュプラグを使用してヘルニアを修復した.術後に初発時のCTを見直してみると,右側に潜在性の閉鎖孔ヘルニアの存在を示唆する所見を認めた.
本症例のような両側異時性閉鎖孔ヘルニア嵌頓の報告例は少ない.しかし,その解剖的特性から閉鎖孔ヘルニアは潜在的に両側性である可能性が指摘されており,初回手術時の対側への注意と処置の必要性が問題となる.
本症例について若干の文献的考察を加え,当院における過去9年間の14例の症例検討と併せて報告する.